
LMIAとは?
外国人がカナダで働くには就労ビザが必要です。
ですが、就労ビザを申請する前に、雇用主はLMIAという手続きを経る必要があります。
この記事では、LMIAがどんなものなのか、雇用主がLMIAの承認を得るにはどんなことが必要なのか、わかりやすく解説します。
LMIAって何なの?
LMIAはLabour Market Impact Assessmentの略称です。
直訳すると、「労働市場への影響の審査」です。
これだと何のことかわからないので、わかりやすく言うと、
「外国人を雇うことがカナダ人の雇用に悪影響を与えないことの確認」ということです。
カナダ人、カナダ移民の雇用を守る
カナダ政府は、外国人がカナダ人の雇用機会を奪うことを望みません。
とは言っても、人材不足に対応して経済成長を続ける必要もあります。
このジレンマこそが、LMIAが必要な理由です。
LMIAにおいて、雇用主はカナダ人あるいはカナダ移民を雇用するために十分な努力をしたかどうかを査定されます。
LMIAをとおして、カナダ政府はカナダ人の雇用機会を奪うことなく外国人の労働力を確保するという、矛盾する二つの目標を達成できるのです。
外国人労働者を守る
LMIAには、外国人労働者を職場での差別や虐待から守るという意味もあります。
LMIAの審査で、雇用主は以下のことを示す必要があります。
- 外国人労働者に働いた分全ての賃金を払う(法定の時間外給与を含む)
- 労災保険を提供する
- 外国人労働者に、他の社員と同じ福利厚生を提供する
- 外国人労働者のID(パスポートなど)を奪ってはいけない
外国人労働者の中には、経済的に貧しい国から出稼ぎでカナダに来る人もいます。
そのような外国人労働者の弱みにつけ込んで、サービス残業をさせたり、福利厚生で他の社員と差別したり、パスポートを取り上げて帰国できないようにするなどといったことが問題になります。
このような職場での差別、虐待から外国人労働者を守ることも、LMIAの重要な役割のひとつです。
LMIAは、カナダ人と外国人労働者の両方を守る制度なのです。
LMIAの申請方法
ここからは、LMIAの申請方法を解説します。
LMIAでは、以下の項目が審査されます。
- 雇用主のカナダ人、カナダ移民を雇用するための努力
- ジョブオファーが公正で適正かどうか
- 雇用主のコンプライアンス(法令順守)
以下、それぞれの項目について詳しく解説します。
カナダ人、カナダ移民を雇用するための努力
カナダ人、カナダ移民を雇用するための努力を示すため、雇用主は採用活動のレポートを提出します。
採用活動には、「求人広告の記録」と「面接の記録」が含まれます。
求人広告は、Job Bank Canada(ジョブバンク)への広告が必須で、その他、条件を満たす他の媒体へ広告を掲出します。
広告媒体の条件は申し込むLMIAのストリーム(申請区分)によって異なります。
(LMIAのストリームについては、この記事の後のほうで詳しく解説します。)
ジョブオファーが公正で適正かどうか?
ジョブオファー(雇用契約書、採用通知)が公正で適正かどうかは、以下の項目で審査されます。
ジョブオファーは以下の条件を満たしている必要があります。
- フルタイムであること
- 無期限(季節労働ではない)であること
- 賃金がその職種の地域における中央値以上であること
- 就業時間、福利厚生、就労場所が明記されていること
カナダでは、フルタイムとは週30時間以上の労働を指します。
ちなみに、カナダでは日本のような正規、非正規の区別はありません。あるのはフルタイムとパートタイムの区別だけです。
期限つきの雇用(例えば産休代替のための半年間のみの雇用)はLMIA申請の対象として認められません。
外国人が低い賃金で搾取されることを防ぐため、雇用主は適正な賃金を提示する(オファーする)ことを求められます。
適正な賃金とは具体的には、その職種の、地域における賃金の中央値以上であることです。
職種、地域ごとの賃金の中央値はこちらのウェブサイトで調べられます。
ジョブバンク ウェブサイト(外部リンク、英語)
ちなみに、調理師(クック)のバンクーバー(Lower Mainland-Southwest Region)での賃金中央値は、時給$16.25です。
カナダシャウズ留学移民センターがLMIA申請に適切な職種と賃金についてアドバイスいたします。無料相談をご利用ください。
雇用主のコンプライアンス(法令順守)
雇用主は、コンプライアンスを守っているか(法令順守しているか)を財務書類などを提出して示す必要があります。
以下は提出を求められる財務書類などの例です。
- カナダ財務省に提出された財務書類
- 公認会計士または弁護士からの認証レター(attestation letter)
- business license(操業ライセンス)
- certificate of incorporation(会社の設立証明書)
LMIAの3つのストリーム
LMIAには以下の3つのストリーム(申請区分)があります。
- High-Wage ストリーム(高賃金ストリーム)
- Low-Wage ストリーム(低賃金ストリーム)
- Permanent Resident ストリーム(移民ストリーム)
ストリームはジョブオファーで提示される賃金と雇用主が外国人労働者のカナダ移民を支援する意思によって分かれます。
申請費用は、High-Wage と Low-Wage ストリームの場合は外国人労働者一人当たり$1,000です。
しかしながら、Permanent Resident ストリームの申請費用は無料です。
以下、それぞれのストリームを詳しく解説します。
High-Wage ストリーム(高賃金ストリーム)
ジョブオファーで提示された賃金が州の賃金中央値よりも高かったら、申請はHigh-Wage ストリーム(高賃金ストリーム)に区分されます。
以下は、2022年4月30日現在の州ごとの賃金の中央値です。
Province/Territory | Median hourly wages as of April 30, 2022 |
Alberta | $28.85 |
British Columbia | $26.44 |
Manitoba | $23.00 |
New Brunswick | $21.79 |
Newfoundland and Labrador | $24.29 |
Northwest Territories | $37.30 |
Nova Scotia | $22.00 |
Nunavut | $36.00 |
Ontario | $26.06 |
Prince Edward Island | $21.63 |
Quebec | $25.00 |
Saskatchewan | $25.96 |
Yukon | $32.00 |
最新の賃金中央値は、カナダ政府のウェブサイトでご確認ください。
広告の条件
High-Wage ストリームのLMIAでは、雇用主はJob Bankの他に少なくとも2つの媒体に求人広告を掲出しなければいけません。
そして、最低一つの広告媒体はカナダ全土を対象としたものでなければいけません。
それは、高賃金の求人には、転居を伴う移動をしてもよいと考える求職者がいると考えられるからです。
トランジション・プラン
High-Wage ストリームのLMIAでは、雇用主は、外国人労働者がカナダ永住権を取得するための手助けをし、カナダ移民に向けた計画(トランジション・プラン)を示す必要があります。
Low-Wage ストリーム(低賃金ストリーム)
ジョブオファーで提示された賃金が州の賃金中央値よりも低かったら、申請はLow-Wage ストリーム(低賃金ストリーム)に区分されます。
キャップ(外国人を雇う上限人数)
Low-Wage ストリームのLMIAでは、外国人を雇う人数に上限(キャップ、Cap)が設定されています。
雇用主は、全従業員数の20%に相当する人数までしか外国人を雇うことはできません。
キャップを設ける目的は、カナダ人の雇用機会を確保するためです。
もし、全従業員数が10人以下だったら、雇用主は2人まで外国人を雇うことができます。
2023年4月30日までの時限措置で、特定の業種の雇用主に、30%のキャップが適用されます。(全従業員数が10人以下の場合、外国人3人まで雇用可能)
詳細は、カナダシャウズ留学移民センターまでお問い合わせください。
広告の条件
Low-Wage ストリームのLMIAでは、雇用主はJob Bankの他に少なくとも2つの媒体に求人広告を掲出しなければいけません。
ここまではHigh-Wage ストリームと同じですが、Low-Wage ストリームの場合、追加の2つの求人広告は、以下の就職に困難を伴うグループを対象としたものでなければいけません。
- Indigenous persons(カナダ先住民)
- Vulnerable youth(若者)
- Newcomers(カナダ新移民)
- Persons with disabilities(障害者)
Transportation(転居費用)
雇用主は、外国人労働者が居住国からカナダに移動するための費用と就労期間終了後に元の居住国に帰るための費用の両方を負担しなければいけません。
Permanent Resident ストリーム(移民ストリーム)
雇用主が外国人労働者のカナダ移民をサポートするための申請が、Permanent Resident ストリームのLMIAです。
Permanent Resident ストリームのLMIAが承認されると、外国人労働者はエクスプレス・エントリーのCRSで50点を獲得することができます。
雇用主は、就労ビザと移民サポートの両方の目的の申請(Dual Intent LMIAと呼ばれます)と、移民サポートのみの申請のどちらでも提出することができます。
移民サポートのみのLMIA申請の場合、申請費用は無料です。
広告の条件と転居費用
ジョブオファーで提示される賃金の金額に応じて、High-Wage ストリームのLMIAまたはLow-Wage ストリームのLMIAの広告条件が適用されます。
賃金がLow-Wage ストリームのLMIAに該当する場合、雇用主は外国人労働者の往復の転居費用を負担する必要があります。
まとめ
LMIAは雇用主が、カナダ人を雇うための十分な努力をした上で、公正な条件で外国人労働者を雇うことを確認するためのものです。
雇用主からすると、煩わしく感じることもあるかと思いますが、カナダ人と外国人労働者の両方を守る大切な手続きです。
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